今回は「痔」に使用されるお薬のまとめです。病院で処方されるような薬が市販薬であったら便利ですよね。同じような商品がないかどうか調べてみました。
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病院で使用されている「痔」の薬
まずは病院でよく使用される痔の注入軟膏から説明します。
注入軟膏ってどれも同じにみえるけど、それぞれに特徴があって微妙な使い分けがされています。まず一番メジャーなのが「強力ポステリザン軟膏」だとおもいます。肛門科はいろんなの使うけど内科や皮膚科とかの専門外のとこだと、とりあえず強力ポステリザン軟膏ってのが多いです。
今回説明するはプロクトセディル軟膏(ヘモレックス)、強力ポステリザン軟膏(ヘモポリゾン)、ネリプロクト軟膏(ネリザ)、ボラザG軟膏です。
カッコ()に書いたのはジェネリック医薬品なので商品名は違うけど基本的には同じものです。各論に入る前に大雑把に薬の強さについて説明します。
強さの比較と言っても抗生剤がはいってたり、痛み止めが入ってたりとタイプが違うので、ここではステロイドの強さを基準にして考えてみます。
まず、おおきくわけてステロイド入ってるのと入ってないのですね。
ノンステロイド
ボラザG軟膏
ポステリザン軟膏
ステロイド配合
ネリプロクト軟膏
プロクトセディル軟膏
強力ポステリザン軟膏
ノンステロイドのものが弱めといえます。
プロクトセディル軟膏と強力ポステリザン軟膏は同じステロイド成分であるヒドロコルチゾン(ウィークランク)が使用されていますが、量を比較するとプロクトセディルの方が1g中に含まれるヒドロコルチゾンの量が倍なので強めといえます。
ネリプロクト軟膏はネリゾナ軟膏に使用されている成分と同じジフルコルトロン吉草酸エステルが配合されています。ネリゾナ軟膏のステロイドのランクは上から2番目ベリーストロングクラスなので強力ポステリザン軟膏やプロクトセディル軟膏よりもだいぶ強いランクに該当します。ちなみに、ヒドロコルチゾンはウィークランクなので上から5番目(一番下)です。
よってステロイドの強さ比較は、
ネリプロクト軟膏(ネリザ) >> プロクトセディル軟膏(ヘモレックス) > 強力ポステリザン軟膏(ヘモポリゾン) > ボラザG軟膏
はい、こんな感じ。ネリプロクト軟膏だけが突出して強いです。
あとは細かな違いは各論でみていくことにします。
ネリプロクト軟膏(ネリザ軟膏)
ネリプロクト軟膏はさきほどのステロイド比較では最強に位置づけられた注入軟膏です。一般名称はジフルコルトロン吉草酸エステル・リドカイン軟膏なのでステロイド成分以外にもリドカインという局所麻酔成分が配合されています。
局所麻酔成分は痛みを麻痺させて痛み症状を和らげます。
ステロイド成分はジフルコルトロン吉草酸エステルなのでネリゾナ軟膏と同じ成分です。ネリゾナ軟膏はベリーストロングのクラスなのでアンテベート軟膏やマイザー軟膏と同じ強さのものになります。
リドカインはキシロカインゼリー2%と同量の2%が配合されています。他の注入軟膏では使用されていないリドカイン成分が多めということもあって、とくに痛みの強い症状によく効きます。
ただ、医薬品の添付文書には漫然と使用すべきものではないことが記載されているので、継続しての使用には十分注意が必要です。
添付文書
本剤での治療は対症療法であるため、概ね1週間を目処として使用し、その後の継続投与については、臨床効果及び副作用の程度を考慮しながら慎重に行うこと。
痛みの強い急性期の症状をラクにしますが、強いので慢性的には使用しません。当然、予防的に使用するものでもありません。痛くないときに麻酔薬使っても意味ないですよね。
これを長期で使うような医者は間違いなくヤブ医者です。強いステロイドずっと使ってると皮膚の感染症の副作用リスクがたかくなります。たとえば、真菌症(カンジダ症、白癬等)、ウイルス性及び細菌性感染症細菌などの感染起こしやすくなるでしょう。
専門外の内科が長期で処方しがちだから、よくならないなら専門医を受診しましょう。以前にネリプロクト軟膏が28g以上でレセプト切られたからうちのエリアでは大量に使う医者はいない。
プロクトセディル軟膏(ヘモレックス軟膏)
ステロイド入り軟膏ですがステロイドの成分はウィークランクの弱めのものが使用されています。特徴的なのは抗生物質が配合されているということです。
抗生物質は細菌による炎症や化膿の症状を改善してくれます。フラジオマイシンはベトネベートNやクロマイPに使用されている成分と同じものです。
一般名称はヒドロコルチゾン・フラジオマイシン配合剤軟膏ですが他にも2種類の成分が配合されています。
- ヒドロコルチゾン:ステロイドの一種なので炎症を和らげます。
- ジブカイン:局所麻酔薬なので痛みや痒みを軽減します。
- エスクロシド:出血を抑えます。
- フラジオマイシン:抗生物質なので細菌感染を予防します。
ジェネリック医薬品のヘモレックス軟膏も知名度が高くプロクトセディル軟膏と同等のあつかいで使用されていることがおおい。症状がひどいうちは抗生物質配合のプロクトセディル軟膏を使用して、よくなるにつれて強力ポステリザン軟膏にシフトする使い方もされる。
強力ポステリザン軟膏(ヘモポリゾン)
医療用の注入軟膏で一番メジャーなのが強力ポステリザン軟膏です。肛門科以外が注入軟膏を処方するときは決まってこの強力ポステリザン軟膏を処方してきます。
一般名称は大腸菌死菌・ヒドロコルチゾン軟膏です。
特徴的なのはなんといっても大腸菌死菌ですよね。正確には、大腸菌死菌浮遊液といい死んだ大腸菌がウヨウヨ浮いている液体を指します。なんともインパクトのある成分ではないですか。
患部周辺を大腸菌死菌で満たすと大腸菌死菌に白血球などの免疫細胞がよってきます。これを白血球走能を高めるといいます。白血球走能を高めることで患部の局所感染防御作用示し、また肉芽形成促進作用による創傷治癒促進します。
ヘモポリゾン軟膏は強力ポステリザン軟膏のジェネリック医薬品です。
名前に強力とありますが何がそんなに強力なのでしょうか?
ステロイドの強さは前述していますがヒドロコルチゾンということでウィークランクの弱いクラスのステロイドなので、ネリプロクト軟膏なんかと比較するとずっと弱いものです。
実は、強力ポステリザン軟膏という商品の他にポステリザン軟膏という商品があります。こちらは、ステロイドの入っていない大腸菌死菌のみの製品です。
これと比較するとステロイドが追加になっているぶん強め(強力)と言えます。つまり、ポステリザンよりも強力だから強力ポステリザン軟膏です。
残念ながら、市販薬に大腸菌死菌浮遊液が使用されているものはないので同じものを購入することはできません。
追記「ポステリザン軟膏」が販売中止になりましたね。ときどき、強力ポステリザン軟膏と間違えて「ポステリザン軟膏」が処方されることがあるので間違いがなくなってハッピーです。ポステリザン軟膏って30gチューブで1回ごとの使い切りではなく先端チューブを取り替えながらつかうんです。めんどいでしょ。めったに処方されることないから2gとかで処方された十中八九強力ポステリザンの間違いです。
強力ポステリザン・プロクトセディル・ネリプロクトと同じ市販薬はあるのか?
どれも同じものは市販されていません。強力ポステリザン軟膏で一番大事な成分である「大腸菌死菌浮遊液」が配合されてる市販薬はありません。
でも、ドラッグストアにも痔の注入薬は販売されているので、病院のものと違いを見てみましょう。
ドラッグストアの商品は膨大なので一番メジャーな商品だと思われるボラギノールを見ていきたいと思う。
ボラギノールの注入軟膏には「黄色」と「黄緑」があるがこの違いはご存知でしょうか?
まずは黄色いボラギノールから紹介します。
ボラギノールA注入軟膏
1個(2g)中成分分量
プレドニゾロン酢酸エステル 1mg
リドカイン 60mg
アラントイン 20mg
トコフェロール酢酸エステル 50mg
お次は黄緑のボラギノールです。
ボラギノールM軟膏
1g中成分分量
リドカイン 30mg
グリチルレチン酸 15mg
アラントイン 10mg
トコフェロール酢酸エステル 25mg
どちらも4種類の成分の組み合わせです。うち3種類は同じ成分が使用されているので、ちがいはプレドニゾロン酢酸エステルかグリチルレチン酸かというになります。つまりステロイドかノンステロイドかの違いですね。
黄色 → ステロイド入り
緑 → ノンステロイド
効き目のしっかりしたものを選びたいのであればステロイド入りの黄色いボラギノールを選択しましょう。
そもそも、緑のボラギノールM軟膏はチューブタイプの軟膏なので注入することは出来ません。注入剤を選択するのであれば黄色のボラギノールA注入一択です。
注入軟膏は比較してみればわかるけど、他の商品も似たりよったいです。病院でもらう様なものと同じ成分のものはありません。
たとえば、市販のものに大腸菌死菌を含有する製剤はありませんし、フラジオマイシンやジフルコルトロン吉草酸エステルを含有する製剤もありません。
プレドニゾロン酢酸エステルはプレドニン眼軟膏などに使用されている成分でウィークランクのものになります。強力ポステリザン軟膏のヒドロコルチゾンとはランクはおなじだけど違う成分ですね。
正直、市販の痔の薬はかなり微妙です。一時的に腫れや炎症を抑えますが完治させるようなものではありません。もし、頻繁に購入しているのであれば肛門科を受診して下さい。頻繁に購入しないとどうにもならないレベルの人が肛門科に行ったら薬でどうこうするのではなく手術になると思います。毎日薬でごまかすよりはスパッとやってもらったほうが今後のためになります。
自分でできる脱肛防止器具
自分でできる、脱肛防止策があります。それがDe-niceという一般医療機器です。脱肛(内痔核が肛門外に出ること)を防ぐため肛門に挿入し使用する器具です。
こんな感じにお尻にふたをするイメージですね。1回ごとの使い切りなので衛生的に使用することができます。
詳しくは公式ページで確認下さい。
ボラザG軟膏とポステリザン軟膏の違い
ボラザG軟膏
トリベノシド + リドカイン
ポステリザン軟膏(販売中止)
大腸菌死菌のみ
どちらもノンステロイドの軟膏ですね。ステロイド気にする人は世の中にけっこう多いのでそういった人にいいです。
ボラザG軟膏の特徴
ボラザGは副腎皮質ステロイドを含有せず、副腎皮質ステロイドとは逆に創傷治癒促進作用を示すトリベノシドを含有します。トリベノシドは抗浮腫作用を有する点で既存の抗炎症薬と類似するが、創傷治癒促進作用を有する点で全く異なっている。従って副腎皮質ステロイドを含有する従来品のように、創傷の治癒を遅延させません。
ポステリザン軟膏の特徴
大腸菌死菌浮遊液は白血球遊走能を高めて局所感染防御作用をしめします。また肉芽形成促進作用により創傷治癒を促進します。
どちらもノンステロイドです。ステロイドの副作用で創傷の治癒を遅らせる創傷治癒遅延というのがあって、もしそれが気になるならこっちの治癒促進のがいい。
上記でも言及しましたが「ポステリザン軟膏」は販売中止ですね。ノンステロイドが使いたければ「ボラザG軟膏」です。
痔に処方される内服薬と同じ成分の市販薬
せっかくなので痔に使われるお薬まとめてみるけど「痔」の内服薬はあんまり種類ないです。
ヘモリンガル舌下錠
有効成分は静脈血管叢エキスです。静脈血管叢エキスは雑食動物の静脈血管叢を加水分解して得た乾燥エキスであり、主成分はポリペプタイドです。痔核の症状(出血、疼痛、腫脹、痒感)の緩解に用いられます。舌下錠なので口腔粘膜より吸収され、消化酵
素や肝臓で代謝を受けることなく血管を経て直接痔患部へ到達します。
ヘモリンガル舌下錠に関しては全くおなじ成分の市販薬があります。
有効成分「静脈血管叢エキス」を医療用のものと同量配合しています。また市販薬には珍しく舌下投与します。
画像はヘモリンドのAmazonの商品紹介ページより。舌下投与の画像がありますね。舌の下にいれて溶かすだけで吸収されます。
酸化マグネシウム
便秘がこそ痔の一番の敵です。便秘がちな人はふだんから柔らかくするように努めましょう。といっても、いきなり食生活だけやわらかくするのは難しいと思う。
便秘薬をつかうならくせになりにくいタイプの酸化マグネシウムがオススメです。
タカベンス錠
植物由来成分であるメリロートエキスが主成分です。メリロートエキスは腫れや炎症を抑える効果を示します。通常、1日6錠で、内痔かく、外痔かくの出血、腫れ、痛み、かゆみの改善やけがや手術後の皮膚の腫れをやわらげる治療に用いられます。
ヘモナーゼ錠
有効成分はブロメラインという消炎酵素剤です。炎症に関連するタンパク質を分解する作用によって、炎症や腫れをしずめます。
サーカネッテン配合錠(販売中止)
有効成分が4種類「パラフレボン・センナ末・イオウ・酒石酸水素カリウム」がまとめて配合された錠剤です。これも炎症をおさえるとともに、センナ末が便通をよくしてくれます。
ヘモクロンカプセル
有効成分はトリベノシドです。ボラザGに使われている成分と同じで腫れや炎症を抑えます。
痔で悩んでる方へのアドバイス
内科や胃腸科で注入軟膏を漫然ともらっているような人は早く肛門科に行ったほうがいいです。注入軟膏だけの治療には限界があって、内科って肛門の中は見ないでしょ?処置もできないでしょ?ただ、漫然と薬だすだけだから症状変化なんてわからない。
肛門科だと手術が前提だから、原因のいぼを切ってしまえば強力ポステリザンを卒業することができます。
日帰りで手術できるクリニックもあるので一度診てもらうといいです。