ジェネリックにするかどうかの患者の意向は、
調剤をする前に聞かないといけないというルールがある。
だから、
処方箋を預かったと同時にジェネリック変更の意向を確認するんだけど、
ジェネリックを理解している人はいいけど、
3割くらいの人で「ジェネリックってなに?」という質問がくる。
この質問に答えるのは、だいたい薬剤師ではなく処方箋を受け取る役の事務である。
事務がこれを説明するのってけっこう難しんですよね。
私は、患者の理解度を見ながら説明を変えるようにしています。
また、1人の患者に長々と説明をとる時間がないので省力バージョンと丁寧バージョンを用意しています。
ジェネリック医薬品についての説明
まずは、
呼びかけから、
↓
ジェネリック医薬品って何?
↓
ジェネリック医薬品とは①~④。
①有効成分が同じで価格が安い医薬品です。
②同じ有効成分のお薬を違うメーカーのお薬に変えることでお安くご用意ができます。
③特許が切れた薬は、違うメーカーが安く作る事ができます。開発費がかかっていないぶん価格が安くなります。有効成分は同じです。
④特許が切れた薬は、違うメーカーが安く作る事ができます。開発費がかかっていないぶん価格が安くなります。有効成分は同じが、添加物は異なります。
ざっと、4パターンです。
まず、難しい話で混乱してしまいそうな方には①で同じ成分で安くなることのみを説明します。
半分はこの説明で納得してくれます。
もっと詳しく、知りたい様な人には随時情報を増やしていきます。
患者が気になるポイントは、なぜ安くなるかですよね。安くなる理由がわからないと気持ち悪くて使えないって人はいますね。
簡単な理由が②の「違うメーカーだから」これで納得してくれない場合は特許の話をします。
特許が切れて開発費がかからないことを説明すると納得してくれます。
全ての人にいきなり特許の話をすると「よくわからん」と言われ、逆に混乱を招いてしまうので、
必ずしも説明しないといけないわけではない。
また、ホントに全く同じかどうか半信半疑の人には、有効成分が同じで添加剤が違うことを説明します。
上記の4パターン全部そうなんだけど、同じ有効成分と言ってはいるが同じ薬とは言っていません。
そう、ジェネリック医薬品は必ずしも同じではないんです。
有効成分は同じであっても使用されている添加剤が違うのだ。
添加剤は、薬の有効成分以外のもので錠剤を形作るために加えられているものです。
有効成分だけ固めても量が少なすぎて錠剤にはならないし、うまく固まらない場合もある。
見た目の量を増やしたり、甘くコーティングしたり、錠剤が口の中で崩壊しやすくしたり、徐放性を持たせたりするために加えられている。
薬の効き目には影響しない、乳糖、セルロース、マグネシウムなんかが使われてます。
ジェネリック医薬品は一定の品質と安全性を保てば添加剤は自由に変えられるので、
添加剤によって、溶け方、味、ニオイなど微妙なところが違ってくるから、同じ医薬品と言ってしまうとまずいわけだ。
色々、うるさそうな人には正直に伝えたほうがあとあと問題にならないので、
完全に同じものではないことを説明したほうがいい。
ただ、もし薬局がジェネリックをすすめてそのジェネリックが合わなかったとしても薬局は責任を問われることはない。
ジェネリック医薬品推進は国の政策だから、バンバン進められるようなバックアップ体制ができている。
もし患者にジェネリックに変えたことで副作用が起こってしまった場合は医薬品副作用被害救済制度が適用になるから医薬品医療機器総合機構にあとはお任せすればいいのです。
責任はないにしろ、もめると面倒なので全てが同じ医薬品だと言い切ることだけは避けた方がいい。
ただし、オーソライズドジェネリックといって新しいタイプのジェネリックだけは、同じ薬といっても差し支えないだろう。
オーソライズドジェネリックとは
オーソライズドジェネリックは、先発品メーカーから正式に特許のライセンス許諾を受けた後発品メーカーが作るジェネリック医薬品です。
先発品メーカー公認でつくれるから、先発品メーカーの指導を受けて全く同じ添加剤で同じ作り方で、先発品と同等のジェネリック医薬品が作れます。
普通なら、
先発品メーカーは後発品医薬品がでるのを嫌がります。後発品がでてしまうと値段が高い先発品が売れなくなってしまうからなんだけど、
特許が切れてしまったら、後発品の発売を止めるすべはありません。
だから、
せめてライバル後発品メーカーにシェアを奪われてしまうのであれば、自分が公認した後発品メーカーを使ってもらた方がまだ利益が出るわけだ。
公認の後発品メーカーってのは、当然提携していたり、資本関係があったりする。
このオーソライズドジェネリックは他のジェネリック医薬品と比べて優位な点としては、
品質が先発品と同等であることがあげられるが、
この他にももう1点優位な点がある。
それは発売日だ。
ジェネリック医薬品を作るにあたっては、先発品の特許が切れるまで待たないといけないんだけど、
このオーソライズドジェネリックは、正式に特許権者から通常実施権(使用ライセンス)を取得するから、
特許が切れなくても、特許権を侵害することなく生産販売をすることができる。
他のメーカーに先立って、生産販売ができるのだ。
薬局は、基本的にはジェネリック医薬品が発売されるのを切望していて、
発売されたらどのメーカーのジェネリックを使用するか選定します。
オーソライズドジェネリックは先立って発売するから、ジェネリック採用を検討するときの選択肢としては、これ一択しかないんです。
そして、品質は先発と同等だから文句なく採用が決まります。
一度採用を決めたらあとからゾロゾロと後発品が発売されたとしても、在庫が増えてしまうから変更はしません。
上記2点で他のメーカーよりも優位だから優先して採用する薬局は多いはずだ。
なぜ先発品と後発品は完全に同一ではないのか?
特許が切れたら自由に後発品医薬品が作れるはずなんだけど、
なぜ添加剤が違うのでしょうか?
まず、「切れた特許」とはこの場合は、医薬品の有効成分の特許で、物質特許を意味します。
特許権は一般公開されているから誰でも見ることができ、これをみれば作り方が書いてあるから真似すれば作れるわけだ。
ただし、特許が切れる前にこれを作ってしまったら特許権侵害で訴えられてしまいます。
有効成分の特許が切れたら、だれでも利用できるようになるんだけど、
特許権で公開されている技術は有効成分に関するものだけだから、有効成分以外に使用している添加剤とか作り方は書いていないんです。
製薬会社は特許を取得していない部分に関しては公開する義務はないので、この点は独自で考える他ありません。
また、錠剤を作る技術でも別に特許を取得していたら、有効成分の特許とは別にその技術も切れるまでまたないと使用できませんね。
だから、
ジェネリック医薬品は有効成分は同一だけど添加剤や作り方は異なるわけだ。
ただ、それはデメリットでもあるが、強みにもなる。
粉薬なんかだと、「先発品よりも美味しく飲みやすくしました」とか「OD錠をフィルム剤にしました。」
みたいに違いをアピールしてセールスポイントにしている例もある。
医薬品の特許権について
「特許が切れる」とあるが具体的にはどれくらいの期間で切れるのでしょうか?
特許権ってのは、一部の例外をのぞいて出願から20年が有効期限です。
出願ってのは、特許を取りたいと書類を提出した日のことで、まだ審査前だからこの時点では特許権は発生していないんだけど、
特許権の起算日はこの出願日になります。
この20年には例外があって、これに該当するのが医薬品です。
医薬品は人体に影響がないかなどの臨床試験がいっぱいあって、せっかく特許をとったとしても臨床検査中は販売できないから、
実質特許が使用できない期間が生じる可能性がある。
これは仕方のない事なんだけど、医薬品に関しては莫大な開発費を限られた20年で回収しないといけないから、
流石に可哀想ってことで、
特許権が登録されてからも臨床検査で実質使用できなかった期間分は5年を限度として延長を認める特例がある。
よって、医薬品の特許権は、最大で出願から25年まで認められる。