今回は変更調剤してもいいのかどうか悩む微妙なとこを解説していきます。
たとえば、
②シロップ剤 → ドライシロップ剤
③OD錠 → チュアブル錠
④先発品よりも薬価が高くなるGEへの変更
⑤粉砕した錠剤 → 散剤
⑥10㎎錠を1錠 → 20㎎錠を0.5錠
①~⑥の変更が可能かどうか自信をもって答えられますか?
今回は、変更調剤の基本的なルールを確認しながら上記の質問に回答していきたいと思う。
答え
②可
③不可
④可
⑤可
⑥可
全問正解できました?
GEに変更に関しては意外と融通が効きます。後ほどちゃんと解説します。
それでは順を追ってジェネリック医薬品(以下:GE)の代替調剤ルールについて復習がてらみていこうとおもいます。
まずは、ベースとなる厚生労働省通知がこちらです。
処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について
(平成24年3月5日保医発0305第12号)
1 一般名処方とは、単に医師が先発医薬品か後発医薬品かといった個別の銘柄にこだわらずに処方を行っているものであること。
2 先発医薬品から後発医薬品への変更調剤が可能な処方せん又は一般名処方に係る処方せんを受け付けた保険薬局の保険薬剤師は、1も踏まえつつ、患者に対して後発医薬品に関する説明を適切に行うとともに、後発医薬品を調剤するよう努めなければならないものであること。
3 処方薬から後発医薬品(含量規格が異なるものを含む。)への変更調剤(類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤を除く。)は、処方薬と同一の剤形の後発医薬品が対象となるものであること。
4 含量規格が異なる後発医薬品又は類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤は、変更調剤後の薬剤料が変更前のものと比較して同額以下であるものに限り、対象となるものであること。
また、含量規格が異なる後発医薬品又は類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤は、規格又は剤形の違いにより効能・効果や用法・用量が異なる場合には対象外とするものであること。
5 類似する別剤形の医薬品とは、内服薬であって、次の各号に掲げる分類の範囲内の他の医薬品をいうものであること。
- ア 錠剤(普通錠)、錠剤(口腔内崩壊錠)、カプセル剤、丸剤
- イ 散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、ドライシロップ剤(内服用固形剤として調剤する場合に限る。)
- ウ 液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤(内服用液剤として調剤する場合に限る。)
ジェネリック変更の基本的なルール
絶対条件が変更可の処方箋であること。医師が変更不可の欄にチェックをいれて署名している場合は変更できません。
これから説明していくのは変更可の場合を前提に説明していきます。
②患者の同意が必要
③先発品への変更はできない
先発 → 後発 は可能
先発 → 先発 は不可能(医師への疑義照会が必要)
後発 → 後発 は可能
後発 → 先発 は不可能(医師への疑義照会が必要)
④後発品に変更であれば規格・剤形変更もできる
先発:アムロジン5mg → 後発:アムロジピン2.5mg×2錠
先発:トランサミン錠 → 後発:リカバリンカプセル
⑤変更後は、FAXやTELで処方元に連絡する
ただし、病院と取り決めがあれば必ずしも毎回しなくてもいい
後発品を先発品に変更することが認められていないのは国がジェネリック医薬品を推進するという方針に反することになるからです。
回答の解説
①液剤 → ゼリー剤への変更
②シロップ剤 → ドライシロップ剤
③OD錠 → チュアブル錠
- ア 錠剤(普通錠)、錠剤(口腔内崩壊錠)、カプセル剤、丸剤
- イ 散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、ドライシロップ剤(内服用固形剤として調剤する場合に限る。)
- ウ 液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤(内服用液剤として調剤する場合に限る。)
剤形変更は無条件に認められるのではなく類似剤形によるものだけが認められるます。その類似剤形というのがア~ウの範囲内とされているのでゼリー剤とチュアブル錠については記載がないため変更には疑義照会が必要になります。
逆に、液剤とドライシロップ剤に関しては「ウ」のカテゴリーに属するので相互に変更が可能といえます。
ただし、ドライシロップ剤に関しては粉をシロップや水に溶かして液剤にした時にのみ変更が可能です。
変更例
↓変更調剤
カルボシステインドライシロップ 0.6g(調剤薬)
(精製水にといて6mLに調整)
こんな感じですね。レセコンで変更できると思いますが、計算までしてくれるわけではないので自分で計算するのでかなりややこしいです。
上記の例も薬剤師に計算してもらいました。ということで、変更は可能ですが、ややこしくなるのでオススメはしません。
変更不可例
イソバイドと同じ成分であるイソソルビドをゼリーにした製品がメニレットゼリーです。こちらはカテゴリーはジェネリック医薬品です。
ただ、剤形変更でゼリー剤への変更は認められないので、変更するにあたっては疑義照会が必要になります。ついでに言っとくとメニレットに関しては先発品よりも薬価が高くなってしまうのでこの点においても変更不可ですね。
変更不可例
これも同じです。「ア」のカテゴリー内にチュアブル錠が記載されてないから剤形変更はできません。もちろん、OD錠への変更もできません。
余談ですがチュアブル錠とOD錠は似ていますが別物です。チュアブル錠は「口で溶かすか、噛み砕いて服用」が基本なのに対してOD錠は「口で溶かしてもいいし、そのまま水で飲み込んでもいい。」です。
キプレスチュアブルの添付文書の記載はこんな感じ「本剤は、口中で溶かすか、かみくだいて服用すること。」だから、水で飲み込んで服用はダメ。
④先発よりも薬価が高くなるGEへの変更
変更調剤を行う際の留意点について
GEへの変更で価格について規定されている文書はここだけです。つまり、剤形変更や含量規格変更を伴う場合は、変更後が変更前よりも安くならないといけないのですが、通常の変更であれば価格が高くなっても患者の同意があればできるのです。
変更例
イソバイドシロップ→ イソソルビド内用液「CEO」
サワシリンカプセル → アモリンカプセル
ジェネリックを推進している意味を考えると薬価が高いものに変更するべきではありませんが在庫の都合上しかたないときもあります。
高くなることを患者さんに伝えて了承をえることができればいいとおもいます。
⑤粉砕した錠剤 → 散剤への変更
平成22年4月30日厚生労働省事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その3)」
1日1回 朝食後
↓
後発医薬品(散剤) 10mg
1日1回 朝食後
A:差し支えない。
「錠剤 → 散剤」はさきほどの類似剤形のカテゴリーの区分を超えてしまうので通常できないのですが、錠剤を粉砕している場合は別です。
もう粉砕したら粉だから、粉から散剤への変更は可能という風に解釈します。
そして、この変更はメリットしかない。
清潔だし、既成品の方が味もいいし、量も正確だし、調剤らくだし。
処方例
↓(変更調剤)
フロセミド細粒4%「EMEC」 1g
これもレセコンが勝手にやってくれるわけではないので自分で量を計算します。難しいので薬剤師にお任せしておきましょう。
⑥10㎎錠を20㎎錠0.5錠に変更
あえて半錠にするというイマイチな変更ですが、できなくはないです。
平成22年度調剤報酬改定に関するQ&A(日本薬剤師会)
A.差し支えない。
半錠にすると時間かかるし汚染するリスクも高まるのでオススメできないけど、在庫の関係上でやむなくせざる負えない状況もあると思います。いざってときの裏ワザ的なものとして知っとくとわりと便利です。
とくに、子供用の薬をあんまり在庫してないとことかは医師に連絡せずともGE半錠で乗り切ることができます。
変更例
アレグラ30㎎ → フェキソフェナジン60㎎ 0.5錠
アレジオン10㎎ → エピナスチン20㎎ 0.5錠
エバステルOD5㎎ → エバスチン10㎎ 0.5錠
ジルテック5㎎ → セチリジン10㎎ 0.5錠
シングレア錠5 → モンテルカスト10㎎ 0.5錠
クラビット250㎎ → レボフロキサシン500 0.5錠
思いつくのがアレルギー薬ばかりですが、ぱっと思いついたのだけでもこれだけの薬を対応可能です。
在庫リスク減らせるし欠品も防ぐことができます。知らないとでてこない発想なので、これを機にぜひマスターしてください。
今回の記事は、こちらの書籍で勉強しなが書きました。28年度は大きな改定があった年なので最新のものを読むことをおすすめします。