平成30年度の診療報酬改定において「ヒルドイド処方制限ならず」ですね。大々的にニュースになって「処方制限」「保険外し」とかいわれてたけど、なんてことはないです。いままでとほとんどかわらずです。
次のような文章が出されました。
疾病の改善の目的外で、一度に多量に処方される血行促進・皮膚保湿剤(ヘパリンナトリウム、ヘパリン類似物質)が一定程度あり、適正使用が求められていることを踏まえ、保険給付適正化の観点から、以下のような見直しを行う。
- 血行促進・皮膚保湿剤(ヘパリンナトリウム、ヘパリン類似物質)の使用について、美容目的などの疾病の治療以外を目的としたものについては、保険給付の対象外である旨を明確化する。
- 審査支払機関において適切な対応がなされるよう周知する。
「審査支払機関」に周知するのだからレセプト査定は厳しくなります。処方できないということはないのですが、査定の数がおおくなると医師は容易に使えなくなります。いままでのように無尽蔵に大量処方はできなくなるでしょう。
とくに抗アレルギー薬やステロイドなどが処方されることなく単体で大量に処方される場合が査定されてくるでしょう。というのも、美容目的使用が話題になったときに「美容目的」を定義するにあたって抗アレルギー薬やステロイドの処方なく単体で処方されたものがウンタラカンタラって計算してたので。
皮膚科以外が処方する「ヒルドイド」なんて、ホントに必要かどうかなんてあやしいものばかりです。100g超えたらどんどん査定していいとおもう。内科や胃腸科がすすんで皮膚症状なんて見ないんだからヒルドイドだす理由って、患者希望でしょ?
患者希望の処方って、人気取り以外のなにものでもない。内科がだすなら1~2本ではないでしょうか?それ以上必要ならそこは皮膚科にまわすべきだとおもう。
ここから先は「処方制限なし」が公表されるまえに書いたものです。
お土産感覚で処方する医者が一番悪い
過去にジジババがシップをこぞってもらいまくるからシップの処方制限が実施されたけど、あのときと同じパターンです。処方制限後はジジババから「なんでもらえないの?」っていわれるけど1回に70枚もらえてまだ文句あるってどういう使い方なわけ。こんなの制限されて当然です。
同じ流れで今度はヒルドイドの制限です。限りある財源を有効に使わないといけないので「美容目的」のヒルドイドとか論外です。ただの美容の保湿ならニベアクリームかワセリン塗っとけばOK。
高級品が使いたければ超高級ワセリンを紹介しときます。サンホワイト不純物が限りなくゼロのワセリンだからおすすめですよ。
美容でヒルドイド使いたい層は、高級な保湿剤を安く手に入れたいという図々しい人たちです。安くもらいたいのにブランド志向だからジェネリックは嫌でヒルドイドじゃないと嫌だっていうからまたイライラします。
ツイッターで的確な意見をみつけまし。
ヒルドイドをたっぷり美容目的に使ってもお前がブスなことに変わりはない
— かずくり (@kazu_clinica) 2017年11月1日
自分のお金だけでヒルドイドもらうなら誰も文句言わないんだけど、問題は健康保険を利用しているということです。3割自己負担の7割は税金や保険料ですね。で、年間で97億円もむだに使われていという話ではないですか。
美容で病院いくな!!エステいけ!!自己負担は3割だから激安って、ほんと自分のことしか考えてないですね。自分のことだけ考えてもらいに行くのが問題になってるのはもちろんだけど、それ以上に問題だと思うのが医者のモラルの低さ。
私がおもうに、ヒルドイド使いすぎでいちばん悪いのは「医者」です。もうね、このヒルドイド問題に関してはどう考えても医者が悪い。処方箋は医者しか発行できないんだから、美容目的で使いたいって言われたら拒否すればいいだけの簡単な話です。患者への人気取りのためにお願いされるがままに、ろくに診察もしないでポンポン処方する医者がいるから、いま問題になっているわけですね。
お医者様も慈善事業じゃないから患者がたくさんこないともうからないわけです。だから人気取りすることはありますよね。その人気取りの方法で手っ取り早いのがお薬をだすことです。とくに、お願いされたものをだすのは簡単でもっとも満足度が高いですね。
せっかく来てくれたからお土産あげて、また来てもらうって魂胆の、お土産感覚ヒルドイドが問題でしょうね。このお土産で人気なのがビタミン剤・湿布・漢方薬ですね。個人的には、全部自費にしてしまえばいいとおもっています。
もちろん、しっかりと拒否する医者もいるので一部のモラルの低い医者が問題ですよね。
本日もお一人ブチ切れてお帰りになりました・・・
怒号飛び交う「ヒルドイド逆ギレおばさん」、どうして処方してくれないのよ!! https://t.co/hqnuy03chg— 桑満おさむ (@kuwamitsuosamu) 2017年10月25日
どうしてもっていうなら自費での処方なら誰にも迷惑かからないから許されます。自費の場合は診察料や処方箋発行料も自費になりますので薬剤料+診察料などその他もろもろでOTCで同じようなもの買ったほうが圧倒的に安いですけどね。
医療用のヒルドイドを美容に誤用しても良いんです。幾らでも処方します。
診察から薬代ふくめ 100% 自己負担なら、500gでも出しますよ。
ただし、血が止まりにくくなるリスクはご承知おきください。
— Eiji Kusumi, MD. (@KusumiEiji) 2017年11月1日
え?血止まらなくなるの?
ヒルドイドの処方制限方法
まだ具体的な政策は開示されてないので予想を書いていきます。やるなら湿布と同じ処方量制限もしくはうがい薬と同じ単独使用不可でしょう。もっと強力な制限だと薬価収載からの除外でオール自費ですが、ここまではやらないでしょうね。マルホ潰れちゃいます。
湿布パターン
1回の処方量制限を課す。湿布の場合は1回70枚以上を処方するときはレセプトに理由が必要です。ヒルドイドシリーズは100g以上はあたりまえにでるので200gくらいがボーダーでどうでしょうかね?湿布の場合は湿布の種類問わず合計で70枚が制限なので、保湿剤の種類を問わず200gで制限かけるとより実用的だと思います。
「ヒルドイド 50g + プロペト 50g」なら100g分のワクを消費したということでどうでしょう。
うがい薬パターン
治療を目的としないうがい薬の単独処方は自費っていうあまり実効性をともなっていない形式だけのルールがあります。風邪や口内炎の予防目的とした処方を制限する目的なんだけど、薬局では治療目的と予防目的との判断ができない。薬剤師が疑義照会すると治療目的でっていわれてコメントを記入するだけで自費になった処方箋をみたことがない。
うがい薬の場合は単独処方のみがこの要件の対象になります。予防目的の単独うがい薬なら市販のうがい薬を買いなさいよってはなしですね。
もしヒルドイドシリーズが単独処方不可になったとしたら、おまけがくっつくだけの話ですね。モラル低い系の医者ならきっとやります。シナールやトランサミンのような合わせて自費にすべきようなものもくっつけて逆にムダが増えかねないおそれがある。
オール自費パターン
ヒルドイド薬価収載から削除です。欲しい人は自費で処方してもらうかOTCで同じようなものを購入して下さい。さすがに厳しすぎてこうはならないでしょうね。
ヒルドイドが自費になると1本25gで約600円です。1壺100gだと約2400円ですね。これだけならまだ大したことないけど、医者の診察料+薬局の調剤料などなどこれらもろもろすべて自費だとヒルドイド1本もらうのに3000円はくだらないでしょうね。
美容目的の人たちにはこれで全然いいんだけどアトピー性皮膚炎とかでホントに必要な人にこれは酷すぎです。
ヒルドイドの医療費削減への提案
- 医師が確固たる意思を持って処方しないもしくは自費診療にする
- 薬局でヒルドイドを零売できる体制をととのえる
- 市販薬を提案する、もしくは、ヒルドイドの商品名で市販薬を売り出す
- 薬価改定する
- レセプト査定強化する
- 専門医以外のヒルドイド処方禁止
いくつか策を考えたので順不同で解説していきます。
当たり前すぎるけど、美容目的で医者が処方しないのが一番の削減になります。必要ない人には処方しない。もしくは自費でしようしてもらうことです。しかし、これができないからいまのヒドイ現状があります。モラルハザードしてるので注意喚起だけでは改善は難しいでしょう。
そこでもっとも即効性のあるのレセプトの査定です。査定のルールはブラックボックスなんでみんな知りません。だから、そっとヒルドイドの大量処方を査定してやりましょうよ。もし皮膚科以外で1回500gで処方がでてたとしたから、問答無用で査定でいいでしょ。1回でも査定されると医療機関は同じ過ちを繰り返さないように気をつけます。
ちょっとデータも見てみましょう。
2016年度のレセプトデータの集計でヒルドイド(25g換算)で1回に50本以上も処方されたケースが約2000~3000回もあるんですよ。1回50本って、1回1250gのことです。1kgこえてるじゃないですか(笑)こんなの一発で査定しましょうよ。
メモ
100回の注意喚起よりも1回の査定の方が効果的
マルホが美白目的の使用があまりにも問題になったから「ヒルドイドの適正使用に関するお知らせ」を交付して、医療従事者に注意喚起を促しましたね。
これを気にマルホさん自主的にヒルドイドの薬価を下げてみてはどうでしょうか?ジェネリックとの薬価差があまりにも大きいので実売価格が乖離しすぎてるんじゃないのかとおもうんですよね。これだけ高い薬価と売上なら先行投資ぶんは十分に回収したでしょうに。
薬価一例
ヒルドイドソフト軟膏:23.7
ヘパリン類似物質油性クリーム「ニプロ」:6.3
100gあたりで「先発:2370円 - 後発:630円 = 1740円」なので差額1740円も違いますよね。医療費削減で一番手っ取り早いのは薬価を下げてしまうことです。
ヒルドイドを病院へもらいに行く理由は、処方箋じゃないと売れないからなんだけど、いっそ薬局で売ってあげるという手もあります。ヒルドイドシリーズに関しては薬局で販売してあげても問題ありません。これを「零売」といいます。他の記事でくわしくまとめています。
薬局は、薬価でヒルドイドを販売してもほとんど利益がありません。販売するときは自由価格になるので薬局が自由に販売価格を設定することができます。
ヒルドイドの薬価は1本600円なので、これを販売するなら1本900~1000円くらいはほしいところですね。1壺薬価は2370円なので1壺100gを販売するなら3000円はほしいところですね。
価格設定して売るのは簡単なんだけどいかんせん「医療用医薬品」を販売するときは広告できないって厳しい制限があります。商標名だしたら広告になってしまうので「ヘパリン類似物質油性クリーム 絶賛販売中」ならいいんじゃないかな。めっちゃグレーだけどね。
市販薬売ればいいだけの話なんだけど市販薬には「ヒルドイド」って商標名のものないんですよね。美容オタクのこだわりって成分が同じだけじゃダメなんですよね。宣伝されている商品そのものがほしいんですよね。だからジェネリックとかもダメ。
マルホが「ヒルドイド」の市販薬を発売すればいいんだけど、そんなことして医師の反感を買うよりは、処方薬でいっぱいだしてもらったほうが儲かりますよね。市販薬にヒルドイドと同じ価格帯をもちこんだらなかなか売れないでしょうね。
OTCで安く売るよりは医療用で高く使ってもらったほうが得策だと思うのは当然でしょうね。
ヒルドイドと同じ成分の市販薬
有効成分はヘパリン類似物質を0.3%含有するのがヒルドイドシリーズです。「ヒルドイドソフト軟膏」「ヒルドイドクリーム」「ヒルドイドローション」などがあります。
またジェネリック医薬品には「ビーソフテンローション」「ヘパリン類似物質外用泡状スプレー」「ヘパリン類似物質外用スプレー」「ヘパリン類似物質クリーム」などいろいろありますね。
ジェネリック品も先発品と同じなのでヘパリン類似物質0.3%含有です。これと同じ成分を同量配合した商品が市販薬にもたくさん出ています。
「さいきa」はパッケージ見てもらえばわかるけど顔に使えることをアピールしてますよね。キャッチフレーズは「化粧水さえしみる肌に」です。美容目的で使うならパッケージ的にはこの「Saiki」がいいのではないでしょうか。
しっかり保湿するなら化粧水や乳液タイプよりはクリームのほうが保護する効果が高いです。このHPクリームは使ったことあるけどオススメです。
ヒルドイドの不正使用が疑われる処方例
薬局でながく働いてるとヒルドイド関連の問題は根深いなと思います。ちょっと振り返っただけでも不正使用が疑われる処方例たくさん出てきます。とりあえず内科にヒルドイドの処方権与えたらダメですね。
近所のクリニックは乾燥してるって言えば200g単位で処方します。サービス精神旺盛でムダな医療費垂れ流しながらの人気取り作戦ですね。
- クリニックスタッフがヒルドイドもらいすぎ問題
- 内科医師が1回200gしか処方しない問題
- 予防接種いくとおまけでヒルドイドを処方したがる問題
- ヘパリン類似物質外用スプレーの用法を「化粧品」で処方する問題