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処方箋

向精神薬多剤投与の減算ルール

向精神薬多剤投与
今回は医科の点数の紹介で「向精神薬多剤投与」についてみていきましょう。医科の点数なんだけど薬局の人もルールしっとかないと薬局の存在意義である二重チェックができないからね。

クリニックからの問合せもあるかもしれないので、知らない人とはこの機会にぜひ学んでいって下さい。

向精神薬多剤投与とは?

向精神薬多剤投与の要件を簡単にまとめるとこんな感じです。

向精神薬多剤投与とは

  • 3種類以上の抗不安薬
  • 3種類以上の睡眠薬
  • 3種類以上の抗うつ薬
  • 3種類以上の抗精神病薬
  • 4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬

これのいずれかに該当する場合は処方料処方せん料が減額されるペナルティーが課せられます。向精神薬の薬漬けをへらすためにとった政府の策ですね。

服用中の薬が効かなければ他の薬を重ねて鎮静化すればいいという安易な考えをなくすための策でもあります。睡眠薬なんて典型的でいままで使っていた睡眠薬で眠れなくなったから新しいのを重ねるという使い方なら、なにも考えなくて済む簡単なお仕事ですよね。

これを無限にみとめると睡眠薬が手放せなくなる依存症の方がどんどん増えてしまいます。

一度、このスパイラルにハマると抜け出るのは大変だから、医者にこれをさせないための規制です。「4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬」はH30年に追加された規定です。

抗不安薬はしばしば睡眠薬としてもつかわれるので睡眠薬2種類で足りない場合は抗不安薬でカバーするといった方法がとられます。「抗不安薬」と「睡眠薬」は親戚みたいなものです。デパスなんか睡眠薬として使うことがありますが分類は「抗不安薬」なので睡眠薬を使ってる人にさらに使いたい人に上乗せしたいときに医者が好んで使います。

ハルシオン・サイレースでまだ眠れないの?よーしデパス足しちゃおう。ってなりますね。

せっかく睡眠薬を規制したのに、これだと規制効果がうすいってことで睡眠薬と抗不安薬をセットにして点数制限をかけました。

この規制がない場合は「セルシン・デパス・ハルシオン・サイレース」これが通ってしまいます。でも、これは容易に通しては行けないのがわかりますよね?

向精神薬多剤投与に対するペナルティー規定

処方料

  1. 3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬、3種類以上の抗精神病薬又は4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬(臨時の投薬等のもの及び3種類の抗うつ薬又は3種類の抗精神病薬を患者の病状等によりやむを得ず投与するものを除く。)を行った場合:18点
  2. 1以外の場合であって、7種類以上の内服薬の投薬を行った場合:29点
  3. 1及び2以外の場合:42点

要約すると通常42点の処方料が向精神薬多剤投与をすると18点に減額されます。

処方箋料

  1. 3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬、3種類以上の抗精神病薬又は4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬(臨時の投薬等のもの及び3種類の抗うつ薬又は3種類の抗精神病薬を患者の病状等によりやむを得ず投与するものを除く。)を行った場合:28点
  2. 1以外の場合であって、7種類以上の内服薬の投薬を行った場合:40点
  3. 1及び2以外の場合:68点

要約すると、通常68点の処方せん料が向精神薬多剤投与をすると28点に減額されます。

「処方料」「処方せん料」が半分以下に減額されるのでかなりきびしいペナルティーであることがわかります。それだけ「国」は向精神薬の大量使用を危険視して規制しようとしているということです。

向精神薬多剤投与にならない2つの例外規定

一律全部ダメとあっては治療に支障がでてしまうケースも想定されるので例外規定が設けられています。

例外は大きく分けて2つ

  • 臨時の投薬等のもの
  • 患者の病状等によりやむを得ず投与するもの

この2つのどちらかに該当したときには減額されずに通常の点数を算定することができます。

臨時の投薬等のものとは

勘違いされやすいポイントなのでよく呼んで下さい。「臨時の投薬」つまり「頓服」というわけではありません。

以下のいずれかに該当するもの全てが「臨時の投薬」です。

「臨時の投薬等のもの」とは

  • 精神疾患を有する患者が、当該疾患の治療のため、当該保険医療機関を初めて受診した日において、他の保険医療機関で既に向精神薬多剤投与されている場合の連続した6か月間。この場合、診療報酬明細書の摘要欄に、当該保険医療機関の初診日を記載すること。
  • 向精神薬多剤投与に該当しない期間が1か月以上継続しており、向精神薬が投与されている患者について、当該患者の症状の改善が不十分又はみられず、薬剤の切り替えが必要であり、既に投与されている薬剤と新しく導入する薬剤を一時的に併用する場合の連続した3か月間。(年2回までとする。)
  • 臨時に投与した場合。(臨時に投与した場合とは、連続する投与期間が2週間以内又は 14 回以内のものをいう。1回投与量については、1日量の上限を超えないよう留意すること。なお、投与中止期間が1週間以内の場合は、連続する投与とみなして投与期間を計算する。)なお、抗不安薬及び睡眠薬については、臨時に投与する場合についても種類数に含める

上記のどれかに該当すれば多剤投与ペナルティーを回避できるけど、いずれも一時的な措置なので継続して回避することはできません。

臨時の投薬といえば「頓服薬」がまっさきに思い浮かびます。たしかに頓服薬は例外になるけど、ただし「抗不安薬」と「睡眠薬」だけは例外とはみなされません。重要なので赤字で強調しておきました。

不眠の多剤投与を頓服薬の「睡眠薬」で回避しようと思っても「そうは問屋が卸さない」のです。まぁ、そんなに甘くないってことですね。

もし「臨時の投薬」して高い点数を算定する場合には「診療報酬明細書の摘要欄に向精神薬多剤投与に該当するがペナルティーを算定しない理由を記載すること。」とされているのでお忘れなく。

患者の病状等によりやむを得ず投与するものとは

「臨時の投薬」でなくても経験豊富な精神科医であればペナルティーを回避できる。

患者の病状等によりやむを得ず投与するものとは

抗うつ薬又は抗精神病薬に限り、精神科の診療に係る経験を十分に有する医師として別紙様式39を用いて地方厚生(支)局長に届け出たものが、患者の病状等によりやむを得ず投与を行う必要があると認めた場合。なお、ここでいう精神科の診療に係る経験を十分に有する医師とは以下のいずれにも該当するものであること。

  • 臨床経験を5年以上有する医師であること。
  • 適切な保険医療機関において3年以上の精神科の診療経験を有する医師であること。なお、ここでいう適切な保険医療機関とは、医師に対する適切な研修を実施するため、常勤の指導責任者を配置した上で、研修プログラムの策定、医師に対する精神科医療に係る講義の提供、症例検討会の実施等を満たす保険医療機関を指す。
  • 精神疾患に関する専門的な知識と、ICD-10において F0 から F9 までの全てについて主治医として治療した経験を有すること。
  • 精神科薬物療法に関する適切な研修を修了していること。

つまり経験豊富な「精神科医」であれば必要であれば「向精神薬多剤投与」をペナルティーなしに行うことができます。ただし、その場合は「診療報酬明細書の摘要欄に向精神薬多剤投与に該当するがペナルティーを算定しない理由を記載すること。」とされているのでお忘れなく。

向精神薬多剤投与の薬剤リスト

対象になる品目は、厚労省が公開する資料「別紙36」にまとめられています。

向精神薬多剤投与

規制の対象になっているのはこのリストにあるものだけです。

「デパス」みたいに「睡眠薬」か「抗不安薬」かなやむくすりも、このリストをみればどのカテゴリーに分類されているのか一発でわかります。

必要性の高い「リスト」なのでダウンロードしてぜひ手元においておきましょう。厚生労働省が公開している資料ではすべて成分名での一覧になってるので商品名にしたものを別記事で紹介しています。

関連記事向精神薬多剤投与の対象薬剤を商品名にした一覧表

「てんかん」や「かゆみ止め」の薬はどう分類すればいいのか?

向精神薬として使っているわけではないけど、分類が「向精神薬」になってしまうようなくすりの取扱はどうすればいいのでしょうか?

たとえば、てんかんで「フェノバール」や「ベンザリン」を使っている場合です。こちら残念ながら無慈悲にカウントされてしまいます。リストで確認してみるとわかりますが、フェノール(睡眠薬)、ベンザリン(睡眠薬)に分類されているので、睡眠薬として数えます。

アタラックスをかゆみ止めとして使った場合やドグマチールを胃薬として使った場合も同じことが言えます。

疑義解釈参照

(問7)別紙36で抗精神病薬に分類されているレセルピンを降圧剤として投薬した場合等、向精神薬を別の目的で投薬した場合も向精神薬多剤投与に係る種類数に含まれるのか。

(答)含まれる。別の効果を期待して投薬した場合であっても、別紙36の分類に基づき向精神薬として種類数にカウントする。なお、種類数に含まれるのは別紙36に示した成分の医薬品を内服・頓服・外用として投薬した場合であり、注射薬は種類数に含まれない。

向精神薬多剤投与に該当するかどうか処方例でチェック

処方例

アタラックス(かゆみ)

デパス

マイスリー

サイレース

アウトー!!

上から順番に「抗不安薬」「抗不安薬」「睡眠薬」「睡眠薬」ということで「4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬」に該当しています。

アタラックスは「かゆみ」に使っていたとしても関係ありません。用途ではなく「成分」でみるので、上記の表にある成分が含まれていたら問答無用でカウントされてしまいます。

処方例

デパス
マイスリー
ロヒプノール

セーフ!!

いっけんすると睡眠薬のトリプル重複にみえますがデパスは睡眠薬ではなく「抗不安薬」に分類されています。よって睡眠薬2種類・抗不安薬1種類でセーフとなります。

処方例

マイスリー
ロヒプノール

レンドルミン(頓服)

アウトー!!

頓服薬ならゆるされるみたな風潮あるけど、ダメですからね。睡眠薬3種類になるのでアウトです。

要点のまとめ

向精神薬多剤投与とは

  • 3種類以上の抗不安薬
  • 3種類以上の睡眠薬
  • 3種類以上の抗うつ薬
  • 3種類以上の抗精神病薬
  • 4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬
  • 睡眠薬と抗不安薬は頓服でもダメ
  • 用途が「向精神薬」でなくても成分が該当するならダメ

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