今回は「向精神薬多剤投与」に関係ある医薬品を一覧表にしてみました。
一覧表のベースになっているのは厚生労働省で公開している「別添様式36」というデータなのですが、このファイルを見てもらえばわかるけど対象薬品がすべて「成分名」で列挙されているのでとにかくわかりずらい。
ただでさえ向精神薬の一般名称は似たようなものが多くて覚えづらいのに、それが一般名でしか公開されていないなんて不親切すぎます。ということで、これはまとめるしかないと思ったわけです。
その「別添様式36」もおいておくので、よかったら原本もDLしてくださいませ。
ダウンロード
まずは商品名で一覧表を提案します。そのあと「向精神薬多剤投与」とはなにか説明していいきます。医科の点数ですが薬局の人も勉強したほうがいいような点数です。
▼薬局向けの勉強におすすめのサイト
-
薬局の勉強に超オススメのサイト
商品名一覧表
商品名にジェネリックを入れてしまうと膨大になるので「先発医薬品」にしぼって複数あるものは複数のせています。ジェネリック医薬品はほとんど「成分名 + メーカー名」なので載せる必要はないとおもいます。
向精神薬多剤投与の対象は「抗うつ薬」「抗不安薬」「睡眠薬」「抗精神病薬」の4つに分類されます。
抗うつ薬
一般名 | 商品名 |
---|---|
クロミプラミン塩酸塩 | アナフラニール |
ロフェプラミン塩酸塩 | アンプリット |
トリミプラミンマレイン酸塩 | スルモンチール |
イミプラミン塩酸塩 | トフラニール |
アモキサピン | アモキサン |
アミトリプチリン塩酸塩 | トリプタノール |
ノルトリプチリン塩酸塩 | ノリトレン |
マプロチリン塩酸塩 | ルジオミール |
ペモリン | ベタナミン |
ドスレピン塩酸塩 | プロチアデン |
ミアンセリン塩酸塩 | テトラミド |
セチプチリンマレイン酸塩 | テシプール |
トラゾドン塩酸塩 | レスリン・デジレル |
フルボキサミンマレイン酸塩 | デプロメール・ルボックス |
ミルナシプラン塩酸塩 | トレドミン |
パロキセチン塩酸塩水和物 | パキシル |
塩酸セルトラリン | ジェイゾロフト |
ミルタザピン | リフレックス |
デュロキセチン塩酸塩 | サインバルタ |
エスシタロプラムシュウ酸塩 | レクサプロ |
ベンラファキシン塩酸塩 | イフェクサーSRカプセル |
抗不安薬
一般名 | 商品名 |
---|---|
オキサゾラム | セレナール |
クロキサゾラム | セパゾン |
クロラゼプ酸二カリウム | メンドン |
ジアゼパム | セルシン |
フルジアゼパム | エリスパン |
ブロマゼパム | レキソタン・セニラン |
メダゼパム | レスミット |
ロラゼパム | ワイパックス |
アルプラゾラム | ソラナックス・コンスタン |
フルタゾラム | コレミナール |
メキサゾラム | メレックス |
トフィソパム | グランダキシン |
フルトプラゼパム | レスタス |
クロルジアゼポキシド | コントール |
ロフラゼプ酸エチル | メイラックス |
タンドスピロンクエン酸塩 | セディール |
ヒドロキシジン塩酸塩 | アタラックス |
クロチアゼパム | リーゼ |
ヒドロキシジンパモ酸塩 | アタラックスP |
エチゾラム | デパス |
ガンマオリザノール | ハイゼット |
睡眠薬
一般名 | 商品名 |
---|---|
ブロモバレリル尿素 | ブロバリン |
抱水クロラール | エスクレ |
エスタゾラム | ユーロジン |
フルラゼパム塩酸塩 | ダルメート |
ニトラゼパム | ネルボン・ベンザリン |
ニメタゼパム | なし |
ハロキサゾラム | ソメリン |
トリアゾラム | ハルシオン |
フルニトラゼパム | サイレース・ロヒプノール |
ブロチゾラム | レンドルミン |
ロルメタゼパム | エバミール |
クアゼパム | ドラール |
アモバルビタール | アモバルビタール |
バルビタール | バルビタール |
フェノバルビタール | フェノバール |
フェノバルビタールナトリウム | ワコビタール |
ペントバルビタールカルシウム | ラボナ |
トリクロホスナトリウム | トリクロリール |
リルマザホン塩酸塩水和物 | リスミー |
ゾピクロン | アモバン |
ゾルピデム酒石酸塩 | マイスリー |
エスゾピクロン | ルネスタ |
ラメルテオン | ロゼレム |
スボレキサント | ベルソムラ錠 |
抗精神病薬<定型薬>
一般名 | 商品名 |
---|---|
クロルプロマジン塩酸塩 | コントミン |
クロルプロマジンフェノールフタリン酸塩 | ウインタミン |
ペルフェナジンフェンジゾ酸塩 | ピーゼットシー散 |
ペルフェナジン | トリラホン |
ペルフェナジンマレイン酸塩 | ピーゼットシー糖衣錠 |
プロペリシアジン | ニューレプチル |
フルフェナジンマレイン酸塩 | フルメジン |
プロクロルペラジンマレイン酸塩 | ノバミン |
レボメプロマジンマレイン酸塩 | レボトミン |
ピパンペロン塩酸塩 | プロピタン |
オキシペルチン | ホーリット |
スピペロン | スピロピタン |
スルピリド | ドグマチール・アビリット |
ハロペリドール | セレネース |
ピモジド | オーラップ |
ゾテピン | ロドピン |
チミペロン | トロペロン |
ブロムペリドール | インプロメン |
クロカプラミン塩酸塩水和物 | クロフェクトン |
スルトプリド塩酸塩 | バルネチール |
モサプラミン塩酸塩 | クレミン |
ネモナプリド | エミレース |
レセルピン | アポプロン |
ハロペリドールデカン酸エステル | ハロマンス・ネオペリドール |
フルフェナジンデカン酸エステル | フルメジン・フルデカシン |
抗精神病薬<非定型薬>
抗精神病薬<非定型薬> | |
---|---|
一般名 | 商品名 |
リスペリドン | リスパダール |
クエチアピンフマル酸塩 | セロクエル |
ペロスピロン塩酸塩水和物(ペロスピロン塩酸塩) | ルーラン |
オランザピン | オランザピン |
アリピプラゾール(アリピプラゾール水和物) | エビリファイ |
ブロナンセリン | ロナセン |
クロザピン | クロザリル |
パリペリドン | インヴェガ |
パリペリドンパルミチン酸エステル | ゼプリオン |
アセナピンマレイン酸塩 | シクレスト |
向精神薬多剤投与とは
商品名だけ紹介しても仕方ないので制度の内容も説明します。向精神薬多剤投与というのはペナルティーのために設けられた規定で、医者による向精神薬の濫用を防ぐためのペナルティーですね。
向精神薬多剤投与とは
- 3種類以上の抗不安薬
- 3種類以上の睡眠薬
- 3種類以上の抗うつ薬
- 3種類以上の抗精神病薬
- 4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬
上記のいずれかに該当するとペナルティーです。
ペナルティー
- 通常42点の処方料が18点に減額
- 通常68点の処方せん料が28点に減額
要約すると「抗不安薬」「睡眠薬」「抗うつ薬」「向精神病薬」はそれぞれ2種類までにとどめないとペナルティーになる。「睡眠薬」と「抗不安薬」はそれぞれ2種類OKであれば4種類までつかえる計算だけど、ここは合算して3種類までに制限されているので注意です。
医者も規制しとかないと際限なく薬をつかってしまうので、患者を「お薬漬け」&「依存症」にしてしまいかねない。
睡眠薬なんかいい例ですよね。医薬品は保険でつかえる1回の量というのが決まっているので、正しい使い方をせずに保険請求してしまうと「査定」といって請求分が取り消されてしまいます。
通常1回1錠つかう睡眠薬を、眠れないからといって1回5錠で処方したら、眠れるようになるかもしれません。でも、その使い方は保険請求上認められた使い方ではないので「返戻」もしくは問答無用で「査定」されてしまうでしょう。
1つの医薬品を増やすと査定されてしまうので、次の手段は種類を増やすことです。
1種類では効かないなら2種類、それでダメなら、3種類、4種類と重ねていくといずれ眠れるようになります。治療方針としてはこれが一番簡単ですよね。原因を探る手間を省いてただ増やしていくだけなんで精神科領域に詳しくなくてもできてしまう。この専門医でもないのにできてしまうというのが問題で安易な「向精神薬」の使用が患者のお薬漬け&依存症を増やしていきます。
ということで、向精神薬は併用できる数に制限をかけて、それでダメなら専門医に紹介状を書きましょうというのが向精神薬多剤投与へのペナルティーの狙いです。
向精神薬多剤投与に該当するかどうか処方例でチェック
処方例
アタラックス(かゆみ)
デパス
マイスリー
サイレース
アウトー!!
上から順番に「抗不安薬」「抗不安薬」「睡眠薬」「睡眠薬」ということで「4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬」に該当しています。
アタラックスは「かゆみ」に使っていたとしても関係ありません。用途ではなく「成分」でみるので、上記の表にある成分が含まれていたら問答無用でカウントされてしまいます。
疑義解釈参照
(問7)別紙36で抗精神病薬に分類されているレセルピンを降圧剤として投薬した場合等、向精神薬を別の目的で投薬した場合も向精神薬多剤投与に係る種類数に含まれるのか。
ドグマチールを胃薬に使ってたとしてもカウントするし、ベンザリンがてんかんに使われていたとしてもカウントされます。無慈悲なのです。
処方例
デパス
マイスリー
ロヒプノール
セーフ!!
いっけんすると睡眠薬のトリプル重複にみえますがデパスは睡眠薬ではなく「抗不安薬」に分類されています。よって睡眠薬2種類・抗不安薬1種類でセーフとなります。
臨時処方(頓服薬)は多剤投与から除外されるのか?
多剤投与にならない除外規定として「臨時の投薬等のもの」というのがあるので説明します。
臨時に投与した場合とは
連続する投与期間が2週間以内又は 14 回以内のものをいう。1回投与量については、1日量の上限を超えないよう留意すること。
なお、抗不安薬及び睡眠薬については、臨時に投与する場合についても種類数に含める。この場合、診療報酬明細書の摘要欄に、臨時の投与の開始日を記載すること。
除外規定はあるけど「抗不安薬」と「睡眠薬」は除外されません。臨時処方として頓服で処方してもカウントされます。
処方例
マイスリー
ロヒプノール
レンドルミン(頓服)
アウトー!!
頓服薬ならゆるされるみたな風潮あるけど、ダメですからね。睡眠薬3種類になるのでアウトです。
薬局関連の勉強にオススメのサイト
薬局に勤めている人なら、すでにほとんどの方が登録ずみだとおもいます。薬局関連の情報が集約された最強サイトといえば「m3.com」です。
薬局関連情報のポータルサイトなので、国内外の最新医療ニュースが「まとめて」閲覧することができます。
「m3.com」では毎日新しい情報が更新されているので、このサイトさえチェックしていれば業界で取り残される心配はありません。上記のリンクをみてもらうとわかりますが「旬」な話題がずらーっと並んでますよね。
薬局の人なら興味深い内容ばかりだとおもいます。記事を閲覧するためには会員登録が必要なのですが、登録は無料で1分ほどの簡単な入力でできてしまいます。
薬局の人なら登録しておいて「損」はないと言うか、むしろ登録しないと「損」な必須のサイトです。
公式ページm3.com