医薬品添付文書の記載内容が大幅にかわるということでその変更内容をまとめてみます。
大きな変更点は以下にまとめた「廃止」と「新設」です。
「廃止」されたもののほとんどが新設の「特定の背景を有する患者に関する注意」に移転するので今回の改定のポイントは「特定の背景を有する患者に関する注意」に情報を集約することだといことがわかります。
廃止
- 「原則禁忌」の廃止
- 「慎重投与」の廃止
- 「高齢者への投与」「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」「小児などへの投与」の廃止
新設
- 項目ごとに通し番号を設定
- 「特定の背景を有する患者に関する注意」の新設
スポンサーリンク
記載要領の要点
- (1)旧局長通知に含まれる「原則禁忌」及び「慎重投与」の廃止、並びに「特定の背景を有する患者に関する注意」の新設等、添付文書等の項目・構造を見直したこと。
- (2)項目の通し番号を設定し、「警告」以降の全ての項目に番号を付与し、該当がない場合は欠番とすることにしたこと。
- (3)添付文書等に記載されるべき内容について全体的な整理を行ったこと。
新規フォーマットの医薬品添付文書はいつから採用されるの?
平成31年4月1日から適用されますが、平成31年4月1日時点で既に承認されている医薬品の添付文書等については、平成36年3月31日までにできるだけ速やかに本記載要領に基づいた改訂を行うこと。とされています。
平成31年4月1日から一度に全部変更というのは難しいので、5年間の猶予期間をもって平成31年4月1日から順序変更されていきます。5年かけてすべて移行する予定です。しばらくは、新旧のフォーマットが入り乱れる状態になります。
先発医薬品をなるべく早急に変更して、それにならって後発医薬品も変更していきます。
新フォーマットの記載項目の一覧
新設されたものでとくに重要なとこは「赤文字」にしておきます。とにかく「9」がだいじ、いままでごちゃごちゃしていた情報を「9」に集約するのが改定の目的ですね。
イ. 日本標準商品分類番号
ウ. 承認番号、販売開始年月
エ. 貯法、有効期間
オ. 薬効分類名
カ. 規制区分
キ. 名称
- 1. 警告
- 2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)
- 3. 組成・性状
- 3.1 組成
- 3.2 製剤の性状
- 4. 効能又は効果
- 5. 効能又は効果に関連する注意
- 6. 用法及び用量
- 7. 用法及び用量に関連する注意
- 8. 重要な基本的注意
- 9. 特定の背景を有する患者に関する注意
- 9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.2 腎機能障害患者
- 9.3 肝機能障害患者
- 9.4 生殖能を有する者
- 9.5 妊婦
- 9.6 授乳婦
- 9.7 小児等
- 9.8 高齢者
- 10. 相互作用
- 10.1 併用禁忌(併用しないこと)
- 10.2 併用注意(併用に注意すること)
- 11. 副作用
- 11.1 重大な副作用
- 11.2 その他の副作用
- 12. 臨床検査結果に及ぼす影響
- 13. 過量投与
- 14. 適用上の注意
- 15. その他の注意
- 15.1 臨床使用に基づく情報
- 15.2 非臨床試験に基づく情報
- 16. 薬物動態
- 16.1 血中濃度
- 16.2 吸収
- 16.3 分布
- 16.4 代謝
- 16.5 排泄
- 16.6 特定の背景を有する患者
- 16.7 薬物相互作用
- 16.8 その他
- 17. 臨床成績
- 17.1 有効性及び安全性に関する試験
- 17.2 製造販売後調査等
- 17.3 その他
- 18. 薬効薬理
- 18.1 作用機序
- 19. 有効成分に関する理化学的知見
- 20. 取扱い上の注意
- 21. 承認条件
- 22. 包装
- 23. 主要文献
- 24. 文献請求先及び問い合わせ先
- 25. 保険給付上の注意
- 26. 製造販売業者等
原則禁忌は廃止されてどこにいく?
廃止されてしまった原則禁忌は「2.禁忌」もしくは「9.特定の背景を有する患者に関する注意」に移転しました。
従来の原則禁忌だと「原則禁忌」のなかにもレベルがあって「禁忌」ととらえるか「慎重投与」ととらえるかで扱いがかわってきます。たとえば、セレスタミン錠の原則禁忌項目をみてみます。
1.有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症の患者
2.結核性疾患の患者
3.消化性潰瘍の患者
4.精神病の患者
5.単純疱疹性角膜炎の患者
6.後嚢白内障の患者
7.高血圧症の患者
8.電解質異常のある患者
9.血栓症の患者
10.最近行った内臓の手術創のある患者
11.急性心筋梗塞を起こした患者
原則禁忌を「禁忌」と解釈すると使える人が一部に限られてしまうので、現場では「慎重投与」ととらえながら使ってしまうケースもよくありますが、これは薬剤師の判断によります。このへんがあいまいになってるので「原則」って言葉を排除して、ダメなものはダメとしっかりと明記することになりました。
原則禁忌の移転先
- 「2.禁忌」
- 「9.特定の背景を有する患者に関する注意」
慎重投与は廃止してどこにいく?
慎重投与は禁忌ではないけど注意しながら使いましょうという項目です。今回の改定の目的は「9」に情報を集約することなので、慎重投与はおもに「特定の背景を有する患者に関する注意」の項の下の「合併症・既往歴等のある患者」に移転します。
内容によっては「効能及び効果に関連する注意」「用法及び用量に関連する注意」「相互作用」へ記載する場合もあります。
慎重投与の移転先
- 「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.1合併症・既往歴等のある患者」
- 「5.効能及び効果に関連する注意」
- 「7.用法及び用量に関連する注意」
- 「10.相互作用」
「高齢者への投与」「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」「小児などへの投与」廃止してどこにいく?
なんども言うけど改定の目的は「9.特定の背景を有する患者に関する注意」に禁忌以外の情報を集約することです。ということで、すべてここに集約されます。
移転先
- 「高齢者への投与」 → 「9.8 高齢者」
- 「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」 →「 9.4 生殖能を有する者」「9.5 妊婦」「9.6 授乳婦」
- 「小児などへの投与」 → 「9.7 小児等」
改正記載要領に基づく添付文書の様式イメージ
薬物動態データの充実
薬物動態データっていままでもあったけど細分化した項目を設定した。
16. 薬物動態
- 16.1 血中濃度
- 16.2 吸収
- 16.3 分布
- 16.4 代謝
- 16.5 排泄
- 16.6 特定の背景を有する患者
- 16.7 薬物相互作用
- 16.8 その他
インタビューフォーム見れば書いてあったりするけど、添付文書になかったりするから、そこを添付文書だけでなんとかななるようにするのが目的です。
だって、添付文書は同封されてるけど、インタビューフォームはついてこないでしょ。ネットでみれるけど、ネット検索できない高齢薬剤師はみれません。
あっ、高齢薬剤師は薬物動態なんかみないか。