月初めに病院を受診したときに保険証を忘れてしまうと、保険で治療を受けることができずに自費扱いになってしまいます。
当然、発行される処方箋も10割負担の自費処方箋です。つまり、保険番号が空白になっている処方箋のことなのですが、保険番号が空白の処方箋の場合は病院代だけでなく薬局の薬代もすべてが自費になってしまいます。
処方箋に保険番号が記載されている場合は保険処方箋、記載がない場合は自費処方箋として取り扱うという暗黙のルールがあるからです。
保険証忘れの場合は救済措置があって、後日保険証を提示することで差額分の返金を受けることができるのができる場合がほとんどです。病院によっては月末までと期間を制限することはありますが、だいたい救済措置があります。ただ、返金はあくまでも病院側のサービス行為であって返金しなければならないという義務ではないので絶対してくれるという補償はありません。
さて、掲題の件ですが、病院をあとにしたあと一度家に保険証を取りに戻ってから薬局へ保険証と自費処方箋を同時にもってくるというケースは十分に考えられます。
この場合は保険適用してもいいのでしょうか?
保険調剤薬局は医療機関として病院と独立しているわけだから独立して保険の是非の判定ができるようにも思えるのですが、残念ながらこれはできません。
そもそも、保険適用にすべきかどうかは医師が判断することであって薬局(薬剤師)が判断することではありません。
医療用の医薬品には、各々に保険適用で使用可能な使い方というのが決められているので、医師は決められた使い方に沿って薬を処方しています。もし保険の適用範囲外で医薬品を使用したい場合は処方箋を自費で発行します。
意図して自費にしているので薬局がこれを変更することはできません。
これができてしまったら特殊な使い方だからという理由であえて自費にしたにもかかわらず患者が保険証を提示したという理由で薬局が勝手に保険にしてしまったらもうやりたい放題です。
ということで、勝手に保険処方箋に変更することはできませんが、絶対にできないというわけではなくちゃんとしたステップを踏めば変更は可能です。つまり、医師への問い合わせですね。
疑義照会して保険適用に変更してよいのかどうかを確認して許諾をえることができれば変更は可能になります。病院からは保険証番号を聞き取ることはできないので、患者から保険番号や被保険者の記号番号などの必要な情報を確認して処方箋や調剤録に記録することで保険処方箋へと切り替えることができます。
保険適用になるかの確認の疑義照会は事務員がしてもよいのか?
事務員の疑義照会はいわゆるグレーゾーンです。まぁ、わたしはダメだと思いますよ。
ネットで検索してみると処方箋の期限延長とか、保険の確認とか薬とは関係ないことは事務員がやるっていう薬局は多いみたいですね。で、薬剤師が問い合わせたことにするみたいなパターン。
薬剤師が問い合わせたことにするってことは、事務員が問い合わせるのはNGって考えているからですよね。
ちなみに、保険適用になるかの有無っていうのは医師が判断すべきことなのですが保険についての問合せはだいたい医療事務の方が回答してくれます。
大病院だってそうですよね。保険の適用は会計ブースの人がやってくれます。忙しい医者はそんなのいちいち感知しません。
ってことで、事務員→事務員で問い合わせでいいとは思うんだけど、やっぱり疑義照会業務は薬剤師がやるべきだとは思います。処方箋業務は薬剤師の専売特許でしょ?疑義照会という業務については薬剤師法に規定されています。
第二十四条(処方せん中の疑義)
「薬剤師は」って書いてあるでしょ。そもそも一般ピーポーは処方箋に文字を勝手に記載してはいけないんです。だから事務員が疑義する時は薬剤師の指示のもと薬剤師の責任においてすると考えています。
事務員の疑義照会については会社の方針があるとおもうので、基本的にはそれに従いましょう。ただ、責任の所在だけは事前に確認しておいたほうが良さそうですよね。