いままで散々話題にされてたけど、ようやく正式に薬剤師以外の軟膏や散剤を作成する行為は違反になるという通知が厚生労働省から出されました。
別に、法律変えたわけではないんだけど、いままで法律の解釈しだいでは、違法にはならないのでは?というグレーゾーン扱いだったところを、厚生労働省は違反だと解釈しますよという、正式な立ち位置を示したのだ。
今回出された通知の全文がこちらです。
薬食総発0625第1号
平成27年6月25日薬剤師以外の者による調剤行為事案の発生について
日頃より薬事行政に対して御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
薬局における調剤業務については、薬剤師法(昭和35年法律第146号)第19条により、薬剤師でない者が、販売又は授与の目的で調剤してはならないとされています。
今般、薬局において、薬剤師以外の者が軟膏剤の混合を行っていた事案が明らかとなりましたが、当該事案を含め、少なくともこうした軟膏剤、水剤、散剤等の医薬品を薬剤師以外の者が直接計量、混合する行為は、たとえ薬剤師による途中の確認行為があったとしても同条への違反に該当するとともに、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第8条(管理者の義務)、第9条(薬局開設者の遵守事項)等への違反につながる行為であり、薬局に対する国民からの信頼を大きく損ねるという点でも大変遺憾です。
貴職におかれては、調剤業務に関する規制の趣旨に鑑み、薬剤師以外の者による当該行為の再発防止に向けて、貴管下の薬局に対する適切な指導をお願いします。
なお、本通知は、個別事案の発生に伴い、当該行為についての薬事法規上の解釈を示したものであることを申し添えます。
どこかの薬局が軟膏ミックスを事務員にやらせたことに対して必殺「遺憾の意」を発動したわけです。
ただ、この通知は調剤薬局事務のピッキング(無資格調剤)すべて禁止までは言及していない。むしろピッキングは最近はOKみたいな風潮になってる。この通知もそうです、ピッキングがダメならこの通知で、軟膏、水剤、散剤の計量・混合にのみ言及せずに、全てひっくるめてピッキングは違反とするはずです。
あえて、計量・混合にのみ言及したということはこれ以外のピッキング行為は推奨しないにしろ、とくだん禁止もしないってことですよね(いまのところ)。
今回は折角なので、この通知に登場する条文を順番に見ていこうと思う。
薬剤師法
第19条(調剤)第1項
薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。
こちらが今回のメイン条文です。「調剤」は薬剤師の独占排他業務であることを示します。
薬剤師がこの条文を違反することはないですね。違反するとしたら薬剤師以外の人つまり「事務員」です。
だとすると、調剤薬局事務は割にあわないですね。薬剤師は「調剤」を命令しただけで、別に調剤してないしそもそも薬剤師だから19条違反にならない。
これって命令されて「調剤」した事務員のみが罰せられるのでしょか?
まぁ、そんなはずないですよね。他の法律もみてみよう。
つぎは、薬事法です。いまは名前が変わって 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」になりましたね。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
第8条(管理者の義務)
1薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、その薬局の構造設備及び医薬品その他の物品を管理し、その他その薬局の業務につき、必要な注意をしなければならない。2薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局の業務につき、薬局開設者に対し必要な意見を述べなければならない。
この条文は、管理薬剤師の義務についてかかれています。管理薬剤師は、薬局に勤務する全ての従業員の監督責任があり、違法行為をしないように注意を払わないといけない。この必要な注意がされてないと管理薬剤師は薬事法違反の処罰の対象になります。
たとえば、恒常的に事務員に調剤(薬剤師法19条違反)をさせてたなら必要な注意がなされたとは言えませんね。
つぎは、開設者の順守事項
第9条(薬局開設者の遵守事項)
1厚生労働大臣は、厚生労働省令で、次に掲げる事項その他薬局の業務に関し薬局開設者が遵守すべき事項を定めることができる。
一 薬局における医薬品の試験検査その他の医薬品の管理の実施方法に関する事項
二 薬局における医薬品の販売又は授与の実施方法(その薬局においてその薬局以外の場所にいる者に対して一般用医薬品(第4条第5項第4号に規定する一般用医薬品をいう。以下同じ。)を販売し、又は授与する場合におけるその者との間の通信手段に応じた当該実施方法を含む。)に関する事項2薬局開設者は、第7条第1項ただし書又は第2項の規定によりその薬局の管理者を指定したときは、第8条第2項の規定による薬局の管理者の意見を尊重しなければならない。
具体的なことは「厚生労働省令」にかかれています。この「厚生労働省令」というのは、薬事法施行規則のことです。いまは、名前がかわって「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」のことですね。
名前が長いよね。周りの人はいまでも薬事法って言ってるから前の名前に戻して欲しい。
施行規則は法令では規定しきれない細かいとこが規定されています。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則
第十一条の七(薬局開設者の遵守事項)
法第九条第一項 の厚生労働省令で定める薬局開設者が遵守すべき事項は、次条から第十五条の十までに定めるものとする。
第十一条の八(薬局における調剤)
薬局開設者は、その薬局で調剤に従事する薬剤師でない者に販売又は授与の目的で調剤させてはならない。
条文をいくつかたどって辿り着いたのがこの施行規則11条の8です。これが開設者が事務員に調剤させたら法律違反で処罰されますよっていう根拠条文です。
ということで、
事務員に、散剤や軟膏をつくらせると管理薬剤師と開設者も違反の対象になります。もちろん、実行した事務員も法律違反になるので気をつけておきたいところですね。
そういえば、今回の通知は一包化については言及されてないですね。
軟膏を練るよりもよっぽど注意が必要な作業だと思います。一包化は頼まれても絶対やらないですね。
では、今回はこれぐらいで(^_^)/~
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