アモバンとデパスという薬が何年も普通薬として処方されていたのですが2016年10月14日からカテゴリーチェンジしてどちらも第三種向精神薬になります。
向精神薬になるのは10月14日だけど、30日の処方日数制限は11月1日からスタートなのでここは注意して欲しい。ちなみに10月発行で11月受付の処方箋に関しては処方制限は適用されません。11月発行の処方箋から日数制限スタートです。
向精神薬になると"薬機法"だけでなく"麻薬及び向精神薬取締法"のしばりもうけるようになるのでより厳しい管理が必要になります。
具体的には、保管方法が厳しくなったり、処方日数に制限がもうけられたり、海外にもちだしに制限がかけられたりします。
ただ、管理が大変になっただけでなく薬局にとってプラスの面もあります。それが"向精神薬加算 "です。
向精神病薬加算についての詳しい記事はこちら
>>麻薬・向精神薬・覚せい剤原料・毒薬加算の算定要件
これは処方箋の中に向精神病薬があるだけで追加で8点が取れるという単純な加算です。
つまり、いままでデパスやアモバンのみの処方では何も加算がなかったのがカテゴリーチェンジしたことで無条件で8点取れるようになったのです。
ちなみに、向精神病薬加算は1調剤につき8点です。もし、同じ飲み方でマイスリーやハルシオンがでてたら1回しか取れません。違う飲み方であればそれぞれで算定することができます。
年間でどれくらい違ってくるのか調べてみました。
1年間で処方された回数
エチゾラムが1年で15回
アモバン7.5、アモバン10が40回
合計で約415回
他の向精神病薬と重複して加算が取れないこともあるので400回くらいにしておきます。
よって400×8点で合計3200点。金額に直すと3万2000円です。
なにもせずとも年間3万円UPならいいですよね。向精神薬の加算はレセコン任せで自動算定になっていると思うので10月14日になったらデパスとアモバンが加算対象になってるかチェックしといた方がいいです。
デパス錠(エチゾラム)とアモバン錠(ゾピクロン)の処方日数制限
エチゾラムとゾピクロンの投与日数制限は30日で確定です。ちなみに投与日数制限は月の途中で開始するとややこしいので11月1日からスタートです。
関連資料:2016年10月13日官報第6877号「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部を改正する件(厚生労働省告示第365号)」
細かい疑問で10月発行で11月受付の処方箋はどうやって対応するのか?って疑義に日本薬剤師会が回答しています。
② ただし、向精神薬加算(調剤料)については、同10月14日調剤分より算定できる。
さて、処方日数制限は短ければ短いほど薬局からしたらプラス改定になるとおもいます。
「デパス 90日」よりも「デパス 30日×3回」の方が基本料が3回も取れるし調剤料だって30日3回の方がずっと高い点数になる。というのも、内服の調剤料は31日で頭打ちになり31日以上は一律87点です。90日で87点、30日だと80点だから3回に分けたら240点になるので薬局にとっては完全にプラスになる。
ただ、必ずしもこのようになるとは限らないのが難しい。
たとえば、デパス錠は30日に制限されたとしても1日複数回飲めるお薬なので1日量を増やして対応することも考えられる。
処方例
毎食後 30日分
1日1錠しか飲まないとしたらこれは何日分なの?もちろんホントはこんな出し方だめだよ。でも考えられることだと思う。
アモバン錠がもし30日に制限されたら、ルネスタ錠に変わるかもしれない。
というのも、ルネスタ錠はアモバンの成分ゾピクロンのより効果の高い部分のみを抽出した薬で、成分名はエスゾピクロンです。つまり、ゾピクロンなんです。
なぜか、ルネスタ錠(エスゾピクロン)は向精神薬にカテゴリーチェンジするという話になっていないので、これはいままで通りの普通薬です。
アモバン錠が30日しか出せなくなったとしても、それに変わるルネスタ錠であれば90日だろうが120日だろうが医師が安全と予見できる分だけ処方できます。
抗精神薬になったら在庫場所がかわるのか?
ここで向精神薬の在庫場所の確認をしておきます。
おそらくなんだけど、鍵のかかる引き出しにいれて保管している薬局が多いのではないでしょうか?実は、必ずしも鍵のかかる引き出しに入れなければいけないというわけではありません。
【関連情報】
厚生労働省による向精神薬取り扱いの手引き(2012年2月)
・病院・診療所における向精神薬取扱いの手引 (PDFファイル)
・薬局における向精神薬取扱いの手引(PDFファイル)
ちょっと引用しておきます。
(1) 譲り受けた向精神薬は、次により保管しなければなりません。
① 薬局内の人目につかない場所で保管すること。
② 保管する場所は、業務従事者が実地に盗難の防止に必要な注意をしている場合以外は、かぎをかけた設備内で行うこと。
〔例〕
a)調剤室や薬品倉庫に保管する場合で、夜間、休日で保管場所を注意する者がいない場合は、その出入口にかぎをかけること。日中、業務従事者が必要な注意をしている場合以外は、出入口にかぎをかけること。
b)ロッカーや引き出しに入れて保管する場合も、夜間、休日で必要な注意をする者がいない場合には、同様に、ロッカーや引き出しあるいはその部屋の出入口のいずれかにかぎをかけること。
わかります?
引き出しもしくは部屋の出入口の"いずれかに"って書いてありますね。調剤室はカギのかかる設備になってるはずなので営業が終わったあとに調剤室を施錠しておけば必ずしも引き出しに保管しておく必要はないのです。
引き出しじゃなくてもいいわけだから、普通薬の棚(カセット)に入っていても大丈夫なはずです。ただ"人目につかない場所で保管"という条件もあるので引き出しのほうがベター。
デパスとアモバンは睡眠薬なの?
なんかやたらと処方されるけど、デパス錠ってなんなの?と思って調べたら抗不安薬らしいです。でも眠くなるから睡眠薬みたいな感じで使う人もいますが、カテゴリーは睡眠薬ではなくあくまでも抗不安薬です。
抗不安薬だから寝る前だけじゃなくって日中に飲む人もいます。デパス1日3回とかね。あと、肩こりとかにも処方されてますね。筋肉の緊張とってほぐしてくれるんだけど、日中つかって眠くならないのか心配。
これに対してアモバンは睡眠薬のカテゴリーです。寝る前に飲むやつね。睡眠薬だから寝る前以外で使うことはありません。
何食わぬ顔して普通薬の引き出しに入ってるけど睡眠薬なんだから向精神薬でしょ。
個人輸入の禁止
向精神薬は、医師から処方された本人が携帯して入国する場合を除いて、一般の個人が輸入することは禁止されています。本人が携帯せず、他の人に持ち込んでもらったり、国際郵便などで海外から取り寄せたりすることはできません。 向精神薬に関する罰則は最高で7年以下の懲役又は200万円以下の罰金です。
普通薬の場合は日本では処方箋でしか手に入らない薬であっても海外製品を個人輸入という形で同じ成分のものを手に入れることができます。
抗生物質とかもインターネットで売っていますが、そのほとんどが個人輸入代行サービスです。
いままではデパスやアモバンと同じ成分のものが個人輸入代行サービスを利用して国内にいながら簡単に手に入れることができたのですが、規制区分がかわって"麻薬及び向精神薬取締法"のしばりもうけるようになったので個人輸入は一切禁止です。
ただ、ルネスタ(エスゾピクロン)は規制対象ではありません。先ほどネットで検索したらエスゾピクロンの個人輸入サイトで簡単に購入できそうな感じだったので、たぶんこれは今後も普通に買えてしまうんだと思う。
向精神薬でない主な精神神経薬
ルネスタ(エスゾピクロン)
ロゼレム(ラメルテオン)
リスミー(リルマザホン塩酸塩水和物)
ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)
グランダキシン(トフィソパム)
もしかすると次はこれらの薬剤がターゲットになってくるかもしれませんね。そもそもエスゾピクロンが対象外なのはおかしな話です。
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