薬局と薬局での医薬品の売買は多分日常茶飯事だと思います。困ったときにはお互い様ということで、近隣薬局から足りない分を買ったり借りたりしますよね。
あと、よくあるパターンが病院にお願いされて医薬品を販売してあげるパターンです。何に使うのかよくわかりませんが、病院へ医薬品を販売することはよくあります。
だけど、逆に病院から購入することはあまりないのではないでしょうか?関わりがないと言えばそれまでですが、これにはちゃんと理由があります。
その理由を今回は説明したいと思います。
そもそも病院は医薬品の販売業者ではないので相手が薬局や病院であったとしても医薬品を販売できないのです。
医薬品の売買は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)」(旧薬事法)によって厳しく制限されているので、販売できるのはごく限られて権限をもつものだけに限られます。
ということで、ひとまず薬機法についてみていく。
薬機法の医薬品の売買について
(医薬品の販売業の許可)
薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
もうこれが全てですね。
薬局と医薬品販売業を受けたものしか薬を販売することはできません。だから、病院は販売(授与)できないんです。
ここで病院内の調剤所の取り扱いについてですが、これを薬局とみなせたら薬局と同じ扱いで販売できるかもしれません。
しかし、残念ながら調剤所は薬局ではないと薬機法に明確に定義されています。
(定義)
⑫この法律で「薬局」とは、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所(その開設者が医薬品の販売業を併せ行う場合には、その販売業に必要な場所を含む。)をいう。ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設の調剤所を除く。
はい、この通り調剤所は薬局ではないと定義されていますね。
だから、診療所や病院の薬剤部や調剤所はやはり医薬品の販売ができません。
ついでなので、今度は薬局が病院へ医薬品を販売できる根拠条文も見てみる。
(薬局医薬品の販売に従事する者等)
①薬局開設者は、厚生労働省令で定めるところにより、薬局医薬品につき、薬剤師に販売させ、又は授与させなければならない。
②薬局開設者は、薬局医薬品を使用しようとする者以外の者に対して、正当な理由なく、薬局医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者(以下「薬剤師等」という。)に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
「医師や病院や診療所に販売するときはこの限りではない」と記載されていますね。だから、病院や診療所には医薬品を譲渡できるのです。
ということで、薬局であれば、病院や診療所に医薬品を販売してもかまいません。
念のため、処方箋医薬品の条文についてもみてみる。
ひとくくりに医薬品と言ってもいろいろ種類がありそれぞれに規制があります。規制が厳しいのが「処方せん医薬品」です。これは原則処方箋で譲渡しなければない医薬品のことです。
(処方箋医薬品の販売)
①薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方箋の交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
条文をみてみると処方せん医薬品も同じです。原則一般人には売れない医薬品ですが、薬剤師等には販売できます。
この薬剤師等というのは第36条の3に定義されています。「薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者」のことです。
薬局であれば処方せん医薬品を病院や診療所に譲渡することができます。
まとめ
薬局 → 診療所:OK
薬局 → 病院:OK
病院 → 薬局:NG
病院 → 病院:NG
偽造ハーボニーやソバルディの現金問屋について
偽造ハーボニーが世間を賑わせていますが、この偽物は一体どこから現れたのでしょうか?上記で説明しましたが許可がない者から医薬品を購入することはできません。
でも、あろうことかこの事件は、偽造ハーボニーを広げてしまった卸(現金問屋)は、無許可の個人から購入したそうです。飛び込み営業かな?
飛び込み営業とか、もっとも警戒しないと行けない人たちですよね。それをあろうことか人の命に関わる医薬品の売買に利用して、免許も確認せずに購入してしまったというのだから、信じられません。
薬事法確認してそっこく免許返納すべきです。というか、無許可の個人と売買した時点でこれは薬事法違反だから口頭注意とか生ぬるい、免許取り消しにするべき案件です。
だって、卸業の主な業務って「医薬品の売買」ですよね?つまり、医薬品の売買しかしてないんだから、そこに違法行為が介在するのであれば、営業させるわけにはいきません。
今回の大本になる現金問屋の名前は公開されていません。早く公開してほしいものです。偽ハーボニーやソバルディについては調査がすすんでいますが、きっとそれだけではないはずです。怪しいところからラムネみたいのを仕入れているんじゃないでしょうか?
現金問屋から買う方もいけないんだけど、現金問屋だって卸だし、免許だって持っている。買ったほうも偽物つかわませた被害者でもある。違法行為をしたのは無免許の個人から購入した現金問屋です。
ちなみに、医薬品の授与の記録は残さないといけないことになっています。これさえも省略してテキトーな会社名で売買したことになってるのだからあきれてしまう。
現金問屋って病院からいらなくなった薬を買って、転売してたのかなと思ったんだけど、そうでもないんですね。そもそも病院は医薬品譲渡できないですからね。
いまは先発品があまり薬価差がでなくなったので、現金問屋も苦しいんだと思います。昔は、あんなにFAXが流れてきてたのに、いまではめっきりみなくなりました。昔は、先発品の大容量包装が主体でしたが、いまはマイナーメーカーのジェネリックを主体に販売しているようです。
そんな感じのFAXがときどききます。
おまけ
病院はデッドストックどうしてるの?
ふと疑問におもうのが病院はデッドストックどうしてるのかです。
まぁ、病院の場合は医者が処方して使えばいいだけの話だから不動在庫になるリスクは薬局と比べたら限りなく少ない。
薬局であれば不動在庫を買い取ってもらえるサービスがあるからそれで売り払ってしまえばいいだけの話です。
>>関連記事医薬品のデッドストック(不動在庫)を処理した3つの方法
薬局であればこのような方法があるが、病院は医薬品の譲渡が許されない以上、買い取りサービスを利用することはできません。つまり、捨てるしかないです。
なにかいい手はないものか?
ここからはちょっとした妄想のはなし。
たとえば、薬局が院内処方の病院へアプローチして、院外処方に切り替えてもらったとします。
そうすると、院内処方していたときの薬品在庫があるので、もし譲渡できるのであれば薬局が引き取り再利用することのが一番スマートです。
院外処方への転換は薬局側からアプローチすることが多いからです。
もし、譲渡ができないのであれば病院が破棄した分の損失を薬局側で補填するなんてことも考えられるけど、あんまりスマートではない。
もし可能であれば医薬品を一度納品した卸に差し戻した扱いにして、それを薬局へ譲渡してもうという手はどうでしょう?
ただの妄想ね。
つまり、卸経由で薬局へ譲渡するってこと。
当然、病院が卸に医薬品を譲渡する権限はありません。あるのは、返品という扱いです。
バラバラにした薬であっても一度返品扱いにしてもらって、卸経由で薬局に持ってきてもらう。
どうでしょう?
うん、ダメだよね。