適正在庫と適正発注は違う。
発注する時は、適正な在庫維持だけでなく作業効率まで考えないといけない。
適正在庫と作業効率まで一緒に考えた発注が適正発注だ。
適正在庫とは
多すぎず、少なすぎずちょうどいい量のことなんだけど、意外と奥が深い。
在庫が多すぎるとどうなるのか?
・管理がしづらくなり作業効率が低下する
・破棄する可能性が高くなる
やはり一番のデメリットは破棄率が上がることですね。医薬品は1箱1万円以上なんてザラです。
出ない薬をいっぱいとったらいずれ破棄することになるので、これが一番の不利益だ。
多すぎて棚に入らなくなってしまった在庫は、引き出しや棚上に在庫することになる。
そうなるとチェックが大変になるので、作業効率が低下する。
患者に迷惑はかからないにしろ従業員に迷惑がかかる。
在庫が少なすぎるとどうなるのか?
・不足分の郵送コストがかかる
・他の薬局に行ってしまう(チャンスロス)
・信用を失う
・不足の説明に時間を割かないといけない
患者の信用を失ってしまうのが一番のデメリットです。
いつも来てくれている患者の薬がいつもないとなると、いずれは他の薬局に変更されてしまいます。
それが月1回で毎月くる患者だとして、1枚の粗利が2000円だったとしたなら、
単純に1年で24000円の粗利が無くなってしまったことになります。
また、この人が向こう10年同じ薬を飲み続けたら、実に24万円のロスになったことになる。
処方箋のチャンスロスを考える時は、単純に処方箋1枚だけで考えるのではなく、生涯患者1人を失ったものとして考えると、不足がいかに勿体ないことかがわかる。
こうして見ると、在庫は過剰よりも、不足の方が罪が重い。
悩んだら、多めにとる方が懸命である。
医薬品の納品は、普通1日2回ある。
午後発注 → 翌日午前納品
最低量として半日分を在庫しておけば足りることになるけど、
これだと同じ薬の患者が重なったり、突発的に大量日数の処方がでたりすると対応できないから、
最低でも1.5日分あるように在庫しときたい。
特定の患者しかでない薬に関しては、その人に足りるようにもっとけばいいので、
1人しか出ない薬に関しは最大処方個数を記入して足りるようにしとけばいい。
毎日ある程度の量が処方される薬は、1日量などと言わずに1~2週間分くらいもっとくといい。
2週間ぶんもっとけば、半分になったら発注でも1週間に1度の発注で済む。
適正発注について
発注はただ在庫が足りるよう発注すればいいというものではなく、
作業効率まで考えて発注しなければならない。
発注する時に、意識しないといけない大原則は「発注の回数をなるべく減らす」ことです。
発注回数が多いことの弊害
・検品に時間が掛かる
・伝票処理に時間が掛かる
・棚入れに時間が掛かる
発注作業自体はバーコードでピッとするだけだから、そんなに時間はかからないんだけど、
それに付随していろんな作業が発生する。
「発注 → 納品 → 検品 → 棚入れ → 伝票入力」
発注回数を減らすということはこれら全ての作業を減らすことにつながる。
例えば、
1日200錠(朝100錠 + 夕100錠)でる薬で、300錠あるように在庫している。
ここでよくある発注として、箱を空けたら発注だ。
すると、午前で1箱、午後で1箱を発注数することになる。
この様に発注していれば、おそらく不足・過剰になる可能性は低い。
ただ、1日2回同じものを発注するということは適正とはいえない。
もし午前に1箱ではなく2箱にすれば、煩わしい作業が1回で済むはずです。
それでも、毎日同じものを発注することになるので、まだ適正とはいえない。
この場合は、在庫数を300錠ではなく1000錠(約1週間分)に設定したらどうだろうか?
そして、300錠を切ったら7箱発注するというルールに変えてみる。
1日200錠つかうと3.5日で300錠を切る計算になるので、3.5日に1回の発注で済む。
もし最初の発注形式をとっていたら7回も発注していることになる。
発注の回数が多いということは、「発注 → 納品 → 検品 → 棚入れ → 伝票入力」の無駄な作業を繰り返していることになる。
1品目発注方法を変えるだけで、これだけ作業を減らせるのだから何百品目も医薬品を取り扱っている薬局において適正発注がいかに業務改善になるかがわかる。
今回は、在庫数を1000錠(約1週間分)に設定してみたけど、
この在庫数は、在庫スペースに余裕があるなら2000錠(約2週間分)に設定してもかまわない。
在庫スペースに応じて、よく出る薬は1~2週間分ストックするといいだろう。
多めにストックすると普段の不足がでる可能性も格段に減るメリットもある。
さっきは、100錠の箱で考えてみたけど、毎日200錠でているのであれば1000錠の箱での発注も検討したほうがいいかもしれない。
1000錠の大箱で発注すると、開封したら返品できないというデメリットがあるけど、
箱をあける作業が1回で済むので扱いやすい。
もし1000錠単位で発注したら、300錠箱に残して、700錠を棚に突っ込む。
そして棚の700錠がなくなったら、残りの300錠を棚に突っ込み、空いた箱で発注する。
さっきの、100錠のときだと「300錠を切ったら7箱発注する」というルールを設定していたが、これだと箱が空いたら発注というルールの例外になってしまうので、発注が漏れる可能性が高くなる。
その点、1000錠包装にした場合は、箱が空いたら発注という原則ルールに則って発注することができる。
これが「発注の回数を減らすこと」を大原則にした発注だ。
箱が空いたら発注というのはとてもわかりやすいルールで発注漏れを減らすことができるけど、
もう一歩踏み込めば、作業効率を劇的に改善することができる。
たくさんあるものに関しては、ときには発注を飛ばす勇気が必要だ。
発注は自分自身の作業だからいいけど、検品や伝票入力なんかはきっと違う人が担当するんだと思う。だから、他人の仕事を増やさないということでも適正発注は大切なことになる。
まず、毎日同じものを発注しているようならそこから見直そう。
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